重い腰を上げて

2003年3月1日
 軽井沢へ行くことになった。

 途中過程を楽しめなさそうな今回の旅行、ちょっと面倒臭くなってきた。
 前日、職場でイヤなことがあったので眠りが深くなってしまい、目覚めもあんまり良くない。5時に起きようと思っていたら、もう7時である。
 本当なら、早くに出かけて、横川辺りでゆっくりして行きたかったのだが……。
 新幹線で行くのもバカらしいので、Hさんがメールで送っていた通りの、普通列車乗り継ぎ+バスで行くことにする。

 上野駅到着。
 乗る列車は9時29分発の快速「アーバン」(前橋行き)である。
 この列車を利用する場合の待ち合わせは、列車の最後尾の車両としており、そちらに向かう。
 大学生の時は、大学と実家との行き来によく利用したものだ。ちょっと懐かしい。
 車両の中は、ボックスの席ではなく、普通の通勤電車のような感じだ。長距離の移動にはあまり向いていないと思う。
「あれ?M君」
 幹事役のMさんが声を掛けてくる。良く見ると、長いイスのほとんどを今回の旅行メンバーで占めている。
「M君、『軽井沢でお待ちしています』なんて、メールに書いてなかったけ?」
「いやぁ。ちょっと仕事でイヤなことがありましてね。それはともかく」
 ちょっと見まわすと、Hさんはおにぎり、Oさんは駅弁をそれぞれ抱えている。
「なんだか大変ですね」
「こんな座席だとは思わなかったからね。これじゃ通勤電車と変わらないよ」
 確かに。少なくともレジャー向きではない。

 電車は出発し、北上して行く。赤羽、浦和、大宮、上尾、桶川、鴻巣、熊谷……。案外、停車駅が多い。
 結構長話を楽しんでいるつもりでいたら、まだ上尾だったりする。
 熊谷から先、各駅停車となる。
 こうなると、埼玉県は広く感じる(地図上ではそうでもないのに)。人家もなかなか途切れない。
 新町で群馬県。なんとなく気持ちが落ち着く。
「お。いい感じだね。あの倉庫なんか」
 新町駅付近の様子を見て、Mさんがそう言う。
 Mさんは好奇心旺盛だ。寄り道をしだしたら、大変だ。いつ目的地に着くやら。
 三つ扇の山並み(妙義・榛名・赤城)が望めるようになると、高崎だ。
 高崎では、横川行き普通電車に乗り換える。冬季の寒さ対策で、電車のドアが半自動扱いだ(停車中の開閉を乗客自身の手で行ない、発車の際は乗務員が自動扱いで閉める)。
 西松井田あたりから急に山が迫る。線路も道路共々、川沿いをなぞるようになる。
 川の反対側に見えるのは妙義山か?こんな間近で見られるとは。
 横川駅到着。いい感じで横川駅に到着したので、一同満足。

 閑散期のバスは、私たちを乗せても大丈夫だろうか(総勢11名)。バスは貸切バスタイプなので、なおのこと心配だ。立っていくわけにはいかないし。
 幸い、私たちを含めて、バスの座席がいっぱいになった程度だった。よかった。
 駅で購入した釜飯を食べつつ、バスの車窓を見る。
 冬であるためか、碓氷峠越えは旧道ではなく、新道の方らしい。車窓が面白くない。旧道であれば、めがね橋(信越線の旧線)が見えたりして、面白いのに。
 バスは、カーブをいくつも曲がりながら高度を稼ぎ、峠を越える。ちょっと気持ち悪くなった。久し振りの乗り物酔いだ。
 やっと、軽井沢近辺。プリンスホテルの展開するアウトレットモールが、賑わっている。
「御殿場の方が、もっと面白いのよね。品揃えも豊富だし」
とは、Tさんのコメントだ。

 軽井沢から星野温泉ホテルまでは、シャトルバスが出ている。
 途中、ブレストンホテル(星野温泉ホテルと同系列)を通る。
「ここから、歩いて行こうよ」
とMさんが唐突に言い出す。大丈夫か?バスは動き出しているのに。
「すいません。降ります」
 運転手さん、ごめんなさい。
 動き出したバスは、ちょっとバックして、バス停車スペースに戻る。
「折角だから、『石の教会』に寄って行こう」
 「石の教会」はブレストンホテルの近くにある。石やコンクリートでできたモダンなチャペルで、内村鑑三記念館も併設されている。どんなものやら。
 チャペルの方は、式を挙げる直前なので入れなかった。内村鑑三記念館(といってもささやかではあるが)は、手紙やら書を展示していて、内村鑑三の功績の説明もある。ここでも、挙式中なので静かにするよう求められる。
 個人的には、軽井沢の貸別荘から東京にいる娘に書き送った葉書と「愛国禁酒」の書とが、気に入った。
 葉書の文面は割に普通で、仮名づかいもやや現代風で、親しみが持てる。娘をかなり可愛がっていたんだろうな。
 式を終えた新郎新婦が出てくる様子を見たり、写真に収めたりする。参列者ではないんだが……。

 星野温泉ホテルに向かう。
 途中、Mさんが雪をKさんに投げつけたりして、散発的に雪合戦が行なわれる。この手のものは、だんだん無差別攻撃と化すから気をつけよう。
 馬頭観音や祠があるあたりで、Mさんが何人かの集中攻撃を食らって、終結する。

 ホテルでチェックインする。
 私ほか数人は普通の部屋を割り当てられる。コテージを期待していたのに。
 部屋で一息ついた後、コテージに行く。大町からやって来た写真家のMさんが、あとで見せるスライドのデモンストレーションをしていた。
 古いスライド機器にちょっと苦心の様子。
 スライドを、手持ちのCDの曲に合わせて見てもらうという趣向のようだ。
 きれいな写真だ。花や植物が専門とのことだが、景色がとてもきれいに撮れている。朝や夕方に良い写真が撮れるという。なるほど。
 リハーサルを終えて、いつの間にやら、Mさんら数人が露天風呂から戻っている。
「M君、Hさんは、もう行っているかと思って声をかけなかったよ」
と言いつつ、ワインを飲み始める。自然発生的に酒盛りだ。
 白ワインから始まったが、飲みやすい。次に赤ワイン。
「地元に美術館があるんですけれどね」
 写真家のMさんが話す。
「そこに勤めている女性が、20代後半なんですが、なかなか結婚できずにいるんですよ」
「それはどうして?」
「地元の男性というと、例えば役場の職員だったりするんですが、土日に競馬新聞なんかを読んでいたりして、ちょっと二の足を踏んでしまうらしいですよ」
「それなら」
 幹事役のMさんがいう。
「ここに、お堅い独身男がいますよ(笑)」
と私を指す。
「6月の旅行は、決まりだね」
 おいおい。
「いいですよお〜。その時は年休とって行きますから〜」
 私も、飲みつけない酒で頭のタガが緩んでいる。大丈夫か、おい。
 冗談だからいいけどさ。
 そうこうしている内に、メンバー皆集まってきて、軽く飲んだり話したりしている内に、夕食だ。
 夕食の時から歓談は続く。
 スライドを見たり。
 露天風呂に入りに行ったり(雨なのに)。
 書き出したら、長くなる。
 寝る前にコテージに寄ったら、中国語の歌を歌わされる。
 つい対抗心が働いてしまったのか、『希望と栄光の国(LAND OF HOPE AND GLORY)』を歌う。かなり音痴だ。

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