熱海出張

2003年6月11日
 出張という行為についてのボヤキは、既に京都出張の際にもしたので、もはや何もいうことはない。
 ただ、目的地が熱海というのが、ちょっと気に食わないだけである。

 普段よりやや遅目に自宅を出発する。
 この時間帯の気分にゆとりがあるのは久し振りである。たまにはこういうのもいい。
 普段この時間帯なら外に居ないはずの自分が、ゆっくり目に自転車を走らせている。同じ光景でも、いつもと違うように見える。時間帯が若干、異なるせいもあろう。
 今日も外は蒸し暑い。
 朝に入浴してさっぱりしたのに、駅に着く頃には汗だくである。

 駅ホームで先輩たちと待ち合わせて、列車に乗り込む。
 自分だけ違う列の席に落ち着いて、持参の本(後輩の男性からの借り物)を開く。
 『六の宮の姫君』(北村薫著)である。女子学生の《私》と探偵役の円紫さん(落語家)とのシリーズだ(円紫さんと《私》シリーズ)。
 今回は芥川龍之介の作品『六の宮の姫君』を巡る謎だが、ミステリー調ではあるものの、「現実」の事件ではなく、文学上の謎だ。『六の宮〜』に関連した、芥川と菊池寛とを巡る謎が今回の主題であり、今回謎を解くのは円紫さんではなく、《私》である。

 列車は定時に順調に進んでいる。
 日本の誇るものの一つだ。
 今回ばかりは、つまらないが。

 新幹線車内では、3人がけの席に座ったので、話をしながら熱海を目指す。

 熱海着。
 先輩の一人に、昼食をご馳走になってから、会場の旅館を目指す。

 会場の旅館は、増改築を繰り返して、ちょっと構造に無理がある。
 本館に隣接して東館がある。南館は川を挟んで建っている。館同士を行き来するには、2Fや1Fまで一度行かないといけない。
 全体集会を行なうスペースは、宴会場だったところを使っている。畳の上に絨毯(というよりフェルトか)を敷いていて、その上にテーブル・机やイスが配置されている。本来ならホテルがこなすべき機能だが、そうした需要にも応えようとしている。
 大浴場はやや手狭である。普通なら良いのだが、行動パターンが似通った集団が泊まって入浴すると、手狭に見える。

 個別の分科会では、先輩の一人が提言者(分科会毎に設定されたテーマについて話をする)でもあり、居眠りできない。
 何となく、学会ってこんな感じなのかと思えてきた。実際の学会はあまりざっくばらんな雰囲気はないだろうが。

 集会を一通り消化した後、単組同士の仲間の交流を兼ねた食事(当然飲みもある)が始まる。
 大人しくしていよう。

 食事・飲み会がいったんお開きとなった後、夜の街に飲みに行く面々あり、部屋で飲む面々あり……。
 私たちは、結局後者だったが。
 私は下戸なので、お茶を飲みながら、話し相手になる。

 話も終わり、寝床につく。
 借りた本を読み続ける。
 芥川と菊池を巡る謎が気になってしまう。
 街に繰り出していた同室の人間も戻ってきたので、眠りにつく。

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