ある一日

2004年7月12日
 昨日は、仕事で朝早くから夜まで拘束されていた。
 おかげで、ちょっと横になったつもりが、そのまま寝入ってしまった。今朝早く起きて、ようやく点けっぱなしになっていた明かりを消した。
 二度寝してから起きても、体はだるい。入浴を済ませていなかったからな。
 最近、あまり職場に行きたくなくなっていることも手伝っているのだろう。

 自分のような融通の利かない人間には、今の職場はどうにも居心地が落ち着かない。
 人が解らないなりに仕事に真面目に取組んでいると、前任者の一人が面白半分でおどかしてくる。もう慣れたというか、鈍くなってきたが、どう反応してよいやら今でも戸惑う。ウンザリした気分になる。
 もう一人の前任者は、別な意味で何を考えているかわからない。人が何かしくじると、面白そうにニヤニヤ笑っていて、猫みたいな御仁である。
 どこまでが冗談で、どこからが本気なんだか……。自分がひどく馬鹿になったような気がして、毎日疲労する。

 何とか入浴を済ませて、朝食を摂っていると、北海道の伯母から電話が掛かってくる。
 今週末に登ろうと思っていた大雪山の旭岳ロープウェイが、今月の10日から1ヶ月運休だそうだ。
 先月ロープウェイのゴンドラが何時間か止まってしまう事故があったので、施設の総点検を行なったところ、巻き揚げ機の一部だかに金属疲労が発見されたそうである。
 オフシーズンに何をやっていたんだろう、この会社は。書き入れ時なのに、会社の収益にマイナスになるのは勿論だが、信用でもマイナスだろうに。もっとも、旭岳登山に関しては、別の交通機関があるわけではないから独占なのだが。

 新しく購入した靴を履いて、職場に行く。一昨年に屋久島に行った時に使用した靴より、軽く履き易いものである。今度の登山に使うつもりだ。
 仕事上の懸案を悩みつつ整理していると、前に上司に見せた作成書類について説明を求められる。
 私としては、報告に出している既存業務は廃止してもらいたいのだが、廃止はできないという。もう他のものでも代替できるのに。変なバランス感覚を持ち込まれても困るのだが、説明に困るのだという。
 それでも評価は変えようがないから、そのまま更に上の方に廻すことにした。説明を求められれば、出向いて説明しようということで。その際、他に評価対象になっている業務の資料も添付する。
 これは全く別な業務で、担当者も異なる。こちらの業務は上司から説明を求められなかったので、書類を訂正せず、説明もなしにそのまま廻すことになった。

 昼食。以前いた部署で弁当を食べる。仕事上の関係の薄い人たちとの付き合いは、精神衛生上、良い。
 その際、旭岳に一緒に登る後輩に、例のニュースを知らせる。幸い、黒岳から登るから、旭岳は下りで、時間が余計に掛かる以上の被害は深刻ではない(疲労度はやや増すけれど)ということになった。

 午後、懸案の仕事の情報を整理したり、前任者の一人に別な事で質問をしたりした。まったく進まない。こういうことが多くなった。
 このことも、最近、職場に行く気力を削いでいるようなような気がする。あんまり前任者や関係者に頼ってはいけないような気がするし、思い切って頼ったら頼ったで、「申し訳ない」と気に病んでしまう。
 でも仕事を進めなければならないから、恥ずかしくてもやらなくてはならない。
 森田療法とかいう言葉が頭の中をちらと行き交うのはこんな時である。「自分が本当にやりたいと思うこと、本来のあり方に進むように自分を仕向ける」という風に解釈しているのだが、違うかもしれない。
 赤面する恐怖、緊張してしまう恐怖……。そういったものも自分の一部なのだと思って、人のためでなく、自分のために計らうことなのだとう風にも記憶している。そういった恐怖を言い訳にして自分のやりたいことをしないでいる方が不幸なことである。

 夕方、例の廻した書類を手に、部署の最高責任者がやって来る。直接の上司のいるあたりで、何か大声で話している。
 私は電話中だったが、私の傍らで猫みたいな例の前任者が、ニヤニヤ笑っている。やはり例の書類のことで来たようだ。
 あとで更に聞いてみると、自分の担当ではない、もう一つの書類の内容に大いに不満なようだったのだ。
 定められたチェックシートを元に評価すると低い評価になるが、存続した方が良い業務だとしたのに、低い評価が気に入らなかったようなのだ。何を言っているやら。担当者は大いに困った様子だった。
 私の担当についても、廃止はできないという流れになりそうだという。腹が立った。
 各項目の評価は最低だから、普通では存続できない。責任者の裁定に任せたいところである。
 何とも釈然としないながらも帰宅する。昨日の疲れがまだ残っているし。

 帰宅後、『百器徒然袋―風』(京極夏彦、講談社)を読了。探偵という名前の破壊者(榎木津礼二郎)が縦横無尽に暴れまわり、主人公である平凡な人間が振り回されるのである。
 いつも不機嫌な顔をしてとてもコワイ京極堂が、ウンザリしている様子が笑える。あまり深刻ではないのだが。
 彼が、何回も主人公にしている忠告がいい。
「あれと付き合うと、それは恐ろしい勢いで馬鹿になる」
 ところどころ、笑いながら、読み終える。

 暑かったので、洗濯物が増える。洗濯する。
 入浴後、就寝。

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