経験値の上昇

2004年9月4日
 未明。
 冷え込みがややきつい。もう少し温かい格好をしていればよかったかもしれない。
 雨の降る音もしたような……。

 5時起床。
 8時に二荒山神社でN君と待ち合わせて男体山を登山するので、朝食や片付けに要する時間から逆算して、決めた起床時刻だった。
 眠い。でも起きなければ。ボーッとしつつ、もぞもぞと起きる。
 天気は良くなっている。雲はやや多め。
 顔を洗ったら目が覚めた。水が冷たい。
 M君も目が覚めたようだ。鳥の声がうるさいとのこと。丁度良い目覚ましになったようだ。

 炊事場で火を起こし、お湯を沸かす。
 レトルトのカレーを昨日の残りご飯にかけ、別なお湯でカップラーメンを食べる。人心地ついた。
 待ち合わせ時刻が迫ってくるので、食後、早速片付け開始。
 テントは畳み方が分からない。なかなか厄介である。
 大雑把に畳んで、クルマに置いておくことにする。これも後の課題だ。

 二荒山神社にてN君と合流。朝早かっただろうに、元気そうだ。
 合流後、早速、社務所にて入山料を支払う。男体山は二荒山神社の神体らしい。信仰の山でもある。修験道も混じっているのだろう。
 登山開始。時刻は大体8時半頃だったろうか。
 まずは神社らしく、鳥居をくぐって石段の登りになる。
 1合目にあるあずまやを過ぎると、森の中の道になり、登山らしくなる。
 この道がなかなか凶悪だった。斜面に対してほとんど蛇行せず、まっすぐに道が延びているので、かなりキツイ登りになるのだ。だんだんにペースを作っていけばいいかと思っていたが、甘かった。
「この道、かなりタチが悪いですよー」
「ロープウェイとかケーブルカーがあっても良いくらいですよ」
「修行するにはいいかもしれないな。やはり信仰の山なのかね」
 まだ、全体の3分の1までも行かないのに、この調子ではどうなるのか。森の中で小休止を取らざるを得なくなった。
 土砂災害防備のための工事が、登山道の少し横のところで行なわれている。人間が歩くには急な斜面に、工事用のモノレールが敷設されている。「乗せて行ってくれー」と言いたくなった。
 小休止終了後、再び歩き出すが、交わす言葉も少なくなっていた。
 3合目で工事用道路と合流。ここから4合目までは工事用道路を歩くことになる。助かった。
 前を歩く中高年のグループになかなか追いつけない。体力に余裕があれば、追い抜いても良いのだが、そんなマネもできない。別に競争ではないので良いけれど。
 ここまでのダメージが予想以上に大きかったか、体力が落ちてきたか。多分、両方だろう。
 シャツにかいた汗がまったく乾かない。寒いと思って着ていた上のシャツを脱いで、Tシャツになった。
 汗はなかなか乾かない。体は熱くなるばかりで、汗も止まらない。
 鳥居のある4合目でまた休憩。ここから登山再開だ。
 鳥居から少し続く石段は、1段の段差が大きくて、足に負担がかかる。
 それでも石段や手すりのある内はまだマシで、また急な登りになるので、再びキツくなる。ずっとこんな調子なのだろうか。
 5合目で、トタンでできた小屋があるので、そこで休憩。何だか、休憩が多くなっているようだ。
 ひたすらキツい。登りが急である上に、足場もあまり良くない。
 あるところでは、見上げる限り(というのは大袈裟だが)急な岩場が続いていて、笑うしかなかった。
「えー!マジかよー!?」
とはN君の叫びだ。
 気を紛らすために、少しは話もするのだが、息が切れるので四六時中会話するとはいかない。
 こんな時に、某栄養ドリンクのCMのように「○ァイトォ!」「イッ○ァーツ!」などとやってはいけない(笑)。
 あれは瞬発的なもので、今回みたいに我が身の危機が連続しているところにおける持続性がまったく期待できないのだ。ぜーはーぜーはー。
 こんな時は呼吸法が大事だ。
 鼻から吸って、口から吐いてを、腹式呼吸で繰り返す。意識してやると、楽にはなれないが、苦痛がかなり軽減される。
 5合目で見かけたような小屋は7合目まである。そのたびに休憩を取った。急な登りがひたすら続き、目標や区切りがないと、辛いのだ。
 たまに下界の見えるところに来ると、中禅寺湖が眼下に広がり、気持ち良い。こういうのは山登りの醍醐味の一つかも。
 生えている木も高いものはだんだん少なくなり、シラカバ(ダケカンバか?)もいつの間にか、目につくようになる。
 8合目は瀧尾神社というが、大岩の前に賽銭箱と社務所兼避難小屋が斜面上にあるだけだ。ここでも休憩を取る。
「ウチの子供を連れて来なくて良かったですよ」
とは妻子持ちのN君のコメント。
 彼にはもう少しで2歳になる男の子がいる。本当にその通りだ。
 こんな状況で、余計なものなど背負っては来られない。
「今回は変な経験値が高まっていますよ」
とはM君のコメント。そう言われればそうかもしれない。
 キャンプで炊事、急な山道、ひたすら続く岩場などなど。昨日からの「イベント」続きで、鍛えられているような按配だ。
 かと言って、ファンタジーRPGの冒険者のように、ちゃんと鍛えられているかどうかは保証の限りではないが。
 数々の試練を経て、龍を倒すなんてマネは到底できない。今の我々では、ボスキャラがいるところに到達して、そこで力尽きてしまうだろう。
 8.5合目を経て9合目に至る途中でも、岩場の続くところがあった。
 小休止を取ってから挑む。
 結果的には岩場はこれで終わりで、あとは急で足場の悪い道が続くだけだった。それだけでもキツいのだが(泣)。
 最後の小休止を取って登り続けると、目の前が開ける。
 まだ急な登りだが、火山礫の続くコースになる。頂上は近いようだ。
 植物も急に少なくなったような印象だ。枯れた木がところどころにある。酸性雨・酸性霧の影響だろうか。
 小さなお社の前を過ぎて、山頂の剣のところに到着。12時過ぎだ。

 あんまり到着したという感慨が湧かない。疲れ過ぎている。
 食事を取って人心地ついた。だが、もう力尽きていて、何もやる気が起きない。
 携帯コンロでお湯を沸かして、コーヒーを飲む。
 N君は頂上でコーヒーを味わうことが憧れだったので、非常に喜んでいた。
 M君と私も、コーヒーを飲んで、少し回復した。ここまで水とコンロを担いできただけの事はあった。

 下りは非常に早かった。
 足への負担は大きいはずだが、傾斜が急だから、足場に気をつければどんどん下ることができる。ずっと話しっぱなしだった。
 登りの時と比べて、なんと違うものか。

 下山終了前後、雨が本降りになる。
 もう少し遅かったら大変なところだった。運が良い。
 あとは日帰り入浴施設で汗を流して帰れば良い。

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