熊野へ

2004年10月9日
 秋は好きだ。
 秋生まれの自分としては、心身ともに一番落ち着くし、居心地の良い季節だ。好きな旅行をするにも良い季節だ。
 と思っていたが、台風を考慮に入れていなかった。しかも今年は大きな台風の当たり年だ。
 今回の旅行は、前々から決まっていた。宿はすでに5月頃には押さえてあった。
 とりあえず、行ける所まで行くしかないということになる。
 向かうことにしたものの、吉と出るか、凶と出るか。

 朝起きてみると、やはりひどい雨だ。列車も動いていない。
 幹線に出れば、動いているようだが……。
 幹線の駅まで何とか出て、東京駅に行く。
 10時10分前、東京駅着。ここで父と10時に待ち合わせだ。
 着いて数分もしないうちに、携帯電話に連絡が入る。着いたという。タイミングが非常によろしい。
 タイミングの良さに感心しつつ、東海道新幹線の改札に向かう。
 新富士と掛川の間くらいで徐行運転中だとかで、1時間余り遅れのダイヤで動いている。
 せっかくの指定席だが、乗れる内に乗ろうということで、乗り込む。本来であれば、9時6分だか出発の「のぞみ」だが、10時10分過ぎに発車する。
 車内はひどくはないがそこそこに混んでいて、車内販売がなかなか来てくれない。車内販売が廻って来たのは、静岡を過ぎた辺りだったろうか。食べられるものが既に売り尽くされていた。
 それでも、ちゃんと動いている列車に二人して座れたのは運が良い。
 所定のダイヤなら、東京・名古屋は「のぞみ」で1時間40分足らずで到着だが、今回は12時20分頃着だから、ダイヤは1時間40分遅れになっている。
 それでも名古屋での待ち合わせに間に合いそうなので、「上出来、上出来」と二人して言い合う。
 名古屋駅に着くが、待ち合わせは「新幹線口」としか言っていないという。大丈夫かと思っていたら、改札外から声が掛かる。
 北海道からやって来た、祖母・伯母・叔父である。今、着いたばかりだという。何というタイミングの良さだろうか。
 早速、近鉄名古屋駅に向かって歩き出す。松阪でクルマを借りて、そこから熊野に向かうのだ。
 有人窓口に並んで、一番早く出る特急の指定を5人分取る。発車時間が迫っている。発車10分前を切るといったタイミングで、指定券の購入ができた。12時50分発の鳥羽行きである。
 ふたたび5人して歩き出して、列車に乗り込む。さほど時間の経たないうちに、発車時刻を迎える。
 私を待っている間に購入した弁当を、車内で食べる。
 5人の話は、お互いのタイミングの良さというか、運の良さに感心することしきりだった。
 台風が来ているのに、飛行機は飛ぶし、東海道新幹線は辛うじて動いているし、待ち合わせ時刻はちゃんと守れているし、なかなかすごいタイミングの良さ、運の良さだと思う。

 14時頃、松阪着。私のイメージは商都という感じなのだが、台風のためか駅に人は少なく、ガランとした感じだった。
 ここからクルマを運転する。運転手は私である。クルマはマーク?。こんなクルマを運転することなど、普段ないから、大丈夫だろうか。
 熊野までのルートは単純である。このまま国道をずっと南下すればよい。あとは新宮かどこかで、ナビが分岐を案内するだろう。
 ややひどい雨の降る松阪を出て、多気くらいまで雨に見舞われたが、あとは天候がどんどん回復してきた。宮川は濁っている。
 ふと、ベートーヴェンのカンタータ『海上の凪と成功した航海』という曲の展開を連想した。この曲は、凪の静と、風が吹き出してから成功した航海の動との対比が極端で面白い。晴れてきた時、『成功した航海』の方を聴きたくなってしまった。
 と言っても、まだまだ道のりは続く。ナビによると、到着予定時刻は、と……。まだまだ遠い。
 紀伊長島にある道の駅で休憩したり、熊野市あたりの海岸でちょっと停止して叔父が写真撮影をしたりしたが、順調に進んではいるが。

 ナビというのは面白いもので、人間の思い込んだ以外の解答を出してくれる。
 私たちの頭では、新宮から北上するかと思っていたのだが、熊野市の市街地の外れから右折(山側に入る)するよう、指示が出る。
 なるほど、そんなルートもあるのか。
 ただ、国道のはずなのに、舗装が悪かったり、車線がなくすれ違いが困難な個所も出てくる。昨年の四国の山中よりは、マシかもしれないが。
 クルマの左側の同乗者は、なかなかスリルを味わったようだ。
 山の中とて、日も暮れてくる。
 早く着きたいなと思っていると、日がすっかり暮れたのち、本宮の宿に到着した。予定時刻よりも早い。やれやれ。

 温泉にざっと浸かってくる。
 川が増水しているので川原のお湯はつかえないが、そこまでの贅沢はいらない。たっぷりした温泉のお湯につかれれば、最高である。
 温泉の効用のためか、体が熱くなり、なかなか湯冷めしない。
 食事は地元の食材を使ったもので、素朴だが美味しい。魚がしょっぱいのは、山の中だからだろうか。
 携帯電話は●ーダフォンのためか、圏外になっている。かえって邪魔が入らなくて良いかもしれない。
 身内でゆったりして、話に興ずる。祖母は寝転がりながら、眠ってしまう。

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